‘When we were little,’ the Mock Turtle went on at last, more calmly, though still sobbing a little now and then, ‘we went to school in the sea. The master was an old Turtle — we used to call him Tortoise —’
‘Why did you call him Tortoise, if he wasn’t one?’ Alice asked.
‘We called him Tortoise because he taught us,’ said the Mock Turtle angrily: ‘really you are very dull!’
« Quand nous étions petits, » continua la Fausse Tortue d’un ton plus calme, quoiqu’elle laissât encore de temps à autre échapper un sanglot, « nous allions à l’école au fond de la mer. La maîtresse était une vieille tortue ; nous l’appelions Chélonée. »
« Et pourquoi l’appeliez-vous Chélonée, si ce n’était pas son nom ? »
« Parce qu’on ne pouvait s’empêcher de s’écrier en la voyant : « Quel long nez ! » » dit la Fausse-Tortue d’un ton fâché ; « vous êtes vraiment bien bornée ! »
Lewis Carroll, Alice au pays des merveilles, traduit par Henri Bué, 1869
»Als wir klein waren,« sprach die falsche Schildkröte endlich weiter, und zwar ruhiger, obgleich sie noch hin und wieder schluchzte, »gingen wir zur Schule in der See. Die Lehrerin war eine alte Schildkröte — wir nannten sie Mamsell Schalthier —«
»Warum nanntet ihr sie Mamsell Schalthier?« fragte Alice.
»Sie schalt hier oder sie schalt da alle Tage, darum,« sagte die falsche Schildkröte ärgerlich; »du bist wirklich sehr dumm.«
Lewis Carroll, Alice’s Abenteuer im Wunderland, übersetzt von Antonie Zimmermann, 1869
“Quando eravamo piccini,” continuò la Falsa-Testuggine, un poco più quieta, ma sempre singhiozzando, “andavamo a scuola, al mare. La maestra era una vecchia Testuggine — e noi la chiamavamo Tartaruga ——”“Perchè la chiamavate Tartaruga se non era tale?” domandò Alice.
“La chiamavamo Tartaruga perchè c’insegnava a tartagliare,” disse la Falsa-Testuggine con dispetto: “Avete poco comprendonio!”
「わたしくしどもが、まだ小亀だった時分」やっと似而海亀が、少しは落ちついたか、でもやっぱり時々には少しすすり泣きながら、話を続けます。わたくしどもは海の学校に行ったものです。オサガメ先生の学校です――もっとも、わたくしども、ゼニガメ先生と呼んでおりましたが」
「海の亀じゃないのに、どうしてまたゼニガメ先生なんて呼んだの?」[8]
「ゼニとってガメつく教えるからにきまってるでしょう」と、似而海亀がぷりぷりして言いました。「あんた、ほんとに頭悪いね!」
8 ウミガメ(turtle)を海にいない淡水性のカメの名(tortoise[訳では、「ゼニガメ」])で呼ぶのはなぜかとアリスはたすねているわけで、アリスの時代には “tortoise” という語は海水性の “turtle” と区別して淡水性のカメを指すのに用いられるのが普通だったのである。
『新注 不思議の国のアリス』,高山宏 訳,東京図書,1994,pp.182-183.
「わしらが子供の時分は」と、海亀フーがやっと先をつづけた。いくぶん気を取り直したようだが、それでもまだ、ときおりしくしく泣きじゃくる。「海んなかで学校へ通ったもんだ。先生は年寄の海亀だったが――みんなして地亀先生と呼んどったよ――」
「どうして地亀先生なの、海亀なのに?」アリスは尋ねた。
「先生ってのは、たいてい近目に決まっとるじゃないか」海亀フーは怒ったようにいった。「まったくもって鈍い子じゃな!」
『不思議の国のアリス』,柳瀬尚紀 訳,ちくま文庫,1987,p.133.
「ぼくたち、子供の頃には、海の中の学校へかよってたんだ」ウミガメモドキはやっとまたしゃべりだした。だいぶおちついてはきたものの、まだときどきすすりあげたりしてる。先生は年とったウミガメだったけど、ぼくたちゼニガメってよんでた」
「どうしてゼニガメなんてよんだの、ほんとはそうじゃないのに」アリスが口をだす。
「だってぜにかねとって、勉強教えるじゃないか」ウミガメモドキはぷりぷりして、「まったくもう、なんてとろいんだ!」
『不思議の国のアリス』,矢川澄子 訳,新潮文庫
「わたしたちが小さい頃――」やっとのことでウミガメモドキは話のつづきをはじめました。あいかわらず、ときどきちょっとすすり泣きがまじりますけど、とにかく物語はつづきそうです。「わたしたちは海の中の学校にかよっていた。先生は年とったウミガメで――みんなはいつも『カメ』とよんでいた――」
「なぜカメなんてよぶの、カメじゃないのに?」アリスはたずねました。
「わたしたちの知識をたかめてくれるからカメとよんだんだよ」ウミガメモドキは急にかんしゃくを起こしました。「ほんとにおまえはなんてにぶい子なんだ!」
『不思議の国のアリス』,高橋康也・迪 訳,河出文庫